商品やサービスの価格の付け方について

最終更新日: 公開日: 2023年04月

これは製造業に限らないのだろうが,利益の出ない価格(値段)の付け方をしている会社がある.

飲食業は人の嗜好があるので一概に決めることは難しいだろうが,製造業はルールにのっとって決めることが可能だ.

どうも原価積み上げ方式?とでもいうのか,そのサービスを提供するのにいくらコストがかかっているのかを計算して,それに利益を上乗せするという考え方が主流のようだ.
ここにはアイデア料とか技術料といった概念的な要素は乏しい.
原材料費しか考えていないのではないか?という疑念が生まれる.
このことは大量に販売する商品に対して初期開発費用をどう考えるかという問題にもつながる.

アイデアを絞り出したり,技術を生み出すには必ずそれなりの対価がかかっている.
アイデアはコロンブスの卵ではないが,最初に思いついた人はそれなりの対価をもらってしかるべきなのに,すぐに常識のようなものになってしまうから価値があるとは考えにくいのであろう.
そして,どうも日本人はそれを安易に考えがちだ.

それに対して,正当な市場価値方式?の値段の付け方は市場に受け入れられる価格を基準にして最大限高い価格設定をする.
既に知られているよい名前があるのかもしれないが知らないので「市場価値方式」という名前にしておく.

この「原価積み上げ方式」はある意味で優しい考え方と言えるが,一社でも「正当な市場価値方式」が存在すると理詰めで考えれば最終的に「原価積み上げ方式」は「負ける」.

原価積み上げ 対 市場価値

ある会社 A と B がある似たような部品を作って売ったとしよう.

A は原価積み上げ方式を採用して価格付けをする会社
B は市場価値方式を採用して価格付けをする会社

だとした場合,

A は原価100円だった場合にはその価格に 20% を乗せて 120円で売る.
B は原価に関係なく,120円で既にA社が売っている商品があるので,やはり 120円で売る.

これなら物事は平和に進む.

市場価値重視型値付けをする会社があるとどうなるか?

しかし,B は考える.A に勝つためには原価を下げるか販売価格を上げるかしかない,と.

その際にマーケティングが効果を発揮するが,130円で販売することを考えるのだ.

120円のものを 130円で売るためにはどうすればよいか?
もっといえば,200円で売るためにはどうすればよいか?

何かをつける,あるいは使いやすくするなどの工夫によって例えば200円で売ることが出来たとしよう.
さらに B は商品を製造・販売するにあたって制約をつけるのだ.
つまり,新しい商品を考えた際の原価を考えて,粗利率が 60% を下回っていたら,製造・販売することをやめるのだ.
結果として B は120円以上で売る商品を作るのだが,その際には必ず粗利率は 60% を越えていることになる.

そうすると何が起こるか?

B が出す商品は120円より高いのだが,何らかの魅力的な付加価値を持っているので,お客様全体ではなくても部分的には受け入れられる.それが150円のものだとすると,A が売っていた120円の商品のうちの何割かは確実に B に持っていかれる.
つまり,お客様全体ではなく,部分的なお客様にきめ細かい対応をする代わりに金額をあげるというイメージである.

B がそれを続けていると確実に粗利率で A を上回ることになり,最初は部分的なお客様だったものが合計すると全部のお客様を網羅するようになっていく.

これが継続されると何が起こるか.
A は利益を削ることでしか,対応が出来なくなるので,いずれジリ貧に陥る.
つまり,人件費が払えなくなり,開発費も払えなくなる.
すると最終的に A が開発しているものについていけなくなる.
そうすると安かろう,悪かろうの製品しか作れなくなる.
A はどんどん売れなくなっていき,一方 B は売上額が増加していくと共に利益率も利益額も増加していく.
このように理論立てて考えれば,原価積み上げ方式 A は 正当な市場価値方式 B に勝てない.

自然の流れと言える.

正当な市場価値方式での値付け

では競合がいない場合,市場価値方式では商品の値段はどのようにしてつければよいのだろうか?
これはその商品がなかった時にどうしていたかを基準にして考えるのだ.

その商品を S としよう.
X と Y と Z を組み合わせて,1時間かけて組み立てていたとしよう.
X が 300円
Y が 200円
Z が 400円
として,1時間かけた人の時給が 1000円 だったとする.(計算を簡単にするために保険や年金,税金などは考えない.1000円で1時間仕事をしてくれる人がいたとする.)

そうすると 1900円となる.
今まで組み合わせて使おうと思っていた人にとっては 1900円払えば上記のような手間はなく一つの商品 S で思ったことが出来る.(素人だと組み合わせるのに道具もないし,スキルもないので時間がもっとかかるし,もしかすると永久に作れないかもしれない.)
その時,S の価格は 1900円より高くすることが出来る.
1時間1000円で人を雇うためにかかる経費,X,Y,Z を購入するのに手間がかかるので,外部の人が 1900 円で手に入れることは不可能なのである.
2300円でも買ってもらえる可能性は高い.

さらに X, Y, Z を組み合わせると大きくなるが,S 一つだとそれより小さくなる場合は,そこに付加価値が生まれているので 2500円や2800円で買う人が現れるかもしれない.
そうすると,2800円が市場価値となる.

その商品がなかった時にどれだけ面倒臭いかによって,その商品の価値は決まる

世の中にオンリーワンというものはなかなかない.
何かをどうこうして高い金を払えばだいたい何とかなるからだ.
逆にどうやっても何ともならないものは高い金を払っても何ともならない.

つまり,オンリーワンの時は価格決定権はもちろん販売者に帰属することになるが,あまりそういうことはない.
だいたい,作れそうな場合はすぐに真似されてしまうので結局周りの価格に左右されてしまうのだ.

折角,付加価値の高い良い商品を販売することが出来ても,真似をされると付加価値が下がる.
それを守るのが特許と言えるが,特許を使わなくても常に先行して商品を企画していき,商品をバージョンアップさせていけば付加価値を下げることを防ぐことが出来る.

原価積み上げ方式での値付け

よく原材料が値上がりしたので,弊社の商品も値上げしますという言葉をよく聞く.

まさにこれが原価積み上げ方式というものだ.
多少原価が上がったからと言って,商品価格に転嫁しないとやっていけないというのはそもそも粗利をほとんど取っていないためともいえる.

付加価値を付けられない商品・サービスの場合はこうなるのは仕方がないことなのだが,加工して付加価値を付けた商品でこれをいうのはまさに「弊社はマーケティングしてませんよ」と公言するようなものである.
薄利多売をしている商品はマーケティングをしていないので原価の影響を受けやすい.

となると,世の中の影響を多大に受けてしまい,経営も安定しない.

価格に転嫁できない場合,原材料の量・質や人件費を落としていくしかない.
つまり負のスパイラルに入ってしまうことになる.

自社商品の粗利率(原価率)を見直してみる

そういう観点からも一度自社のサービスや商品を見直してみてはいかがだろうか?

売上額も粗利額も低い商品はないだろうか?
そういうものの販売をやめることから経営は安定するだろう.

 

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