【影響力の武器】クリック実行は失敗するし,損もする
「影響力の武器」によると次々に流れてくる情報を効率よく処理するため,いわばフレームワークのように一定の法則に従って,処理を簡単に済ませてしまうという性質があるらしい.これをクリック実行(クリック・ラン)という.(自動的反応ともいえる.)
確かになんでもかんでも精査していると時間もかかるし,頭も使うので身が持たない.
世の中にいう「啓蒙的な商品」というものは使ってみると画期的なものだが,最初に使うまでのハードルが高くなる.
それは当然のことで「クリック・ラン」で説明できる.
つまり,「画期的な商品」は理解するのに頭と時間を使うので「面倒だから処理しない」という方向に行くのである.
無駄なエネルギーをとられる確率が高いので,人間の動きとしては間違ってはいないが,本当に役に立つ情報を獲得するのに失敗したり,クリック・ランの仕組みを利用した詐欺にあってしまう.
つまり,「クリック・ラン」は一歩間違うと非常に危険な性質も持ち合わせている.
画期的なアイデアというのはその性質上,何かと何かの組み合わせから出来ることが多く,自分で一から作り出すというよりは他から入った情報がすでに自分の頭の中にある何かの情報と組み合わさることにより,生み出されることが多い.
つまり,外から入ってくる情報を遮断するという行為は画期的なアイデアを見つけるということから自分を遠ざける行為となる.
しかし,人間は「クリック実行」で生きているのでいつもと違うことはしたくないのである.クリック実行は人間慣性の法則ともいえる.
詐欺に走るか,商品企画をするか
詐欺や営業に使う
この人間の習性ともいえる「クリック実行」だが,これを悪用すると詐欺に使える.
出来る営業マンの中にはこれを無意識に利用しているもしくは,意識的に利用している人もいるだろう.
詐欺は騙される方も悪いという言われ方もするが,人間本来の習性をついてきているので,だまされないこと自体が難しい.
つまり「影響力の武器」によって買わなくてよいものまで購入して失敗する.
商品企画に使う
このように他人に対して,この「影響力の武器」を行使すると自分の思っているように動かすことが出来る一方,【商品企画】という仕事はこのクリック実行に如何にあらがっていくかが問われる仕事である.
何故なら,「影響力の武器」によれば,なるべく考えないで済むなら考えない方向にいくのが人間の習性であり,その方向では自分の知らない新しいことに触れるということは考えるということに等しくなり,考えなくて済むなら,新しいものは拒否したほうがよく,組み合わせてアイデアを生み出すことは不可能になってしまうからである.
「影響力の武器」によって知るべき情報も拒絶してしまって損をする.
つまり,企画をしたい人は常にこの「影響力の武器」に対する防衛力を鍛えておく必要がある.
そういう意味でも【商品企画】になりたい人にはこの本は必読の書といえるだろう.
是非,要約ではなく,自分自身の目でしっかり読むことをお勧めする.
そして,無意識に行っている「クリック実行」をやめることを心掛けるのだ.
実践するとしたら
- 全く知らない人の話は一度は聞いてみる
- 知らない分野の本を読んでみる
- 知らない人からのメールは一度は読んでみる
とにかく全て拒絶するのをやめれば,新しい情報を獲得し,画期的な新商品や新サービスを開発することも可能になるのだ.
みんな,だいだい「こういう場合は碌なことがない」という状況だけで新しいことに対して拒絶反応をしてしまう.
詐欺のようなケースが多いため,だいたいはそれで問題なかったりするのだが,そういう石の中にたまに玉がまじっている.そして,石か玉かを見分けるには「人間の習性」をよく理解しておく必要があるということだ.
みんなが拒絶するということは,本当に重要なものはその中に隠れている可能性が高い.
付加価値の高い商品というのはみんなが思いつけない商品であることが多いからだ.
以前,みんなが欲しいものを作っても儲からないと書いたことがあるが,みんなが欲しいと気づいている時点で既に作っている人がいるからだ.
本当に価値あるものはみんなが気づくものではないし,それゆえ,いつもみんなが気づいていないことに気づくための努力が必要になるということなのだ.
つまり,考えることをやめようとすることから自分を遠ざける必要がある.
情報があふれかえっている中で
ウェブサイト(ホームページ)ではまとめサイトのような著作の二次引用による魂の抜けた文章が多く,AIが作った文章は間違いがところどころにあるために信用できず,どの情報を信じてよいかが分からない非常に難しい世界になってきている.
Youtube などの動画や SNS も同様だ.
嘘の情報や視聴時間を稼ぐための無駄な尺稼ぎをしているチャンネルは片っ端から「チャンネルをおすすめに表示しない」としていくぐらいしか方法はないのだろうが,ウェブサイトに関しては検索結果の上位におかしな情報が来てしまうと防ぎようがない.
やはり,常に情報を取捨選択する技術は普段から磨いておく必要がある.
そのためにも「全てシャットアウト」ではなく,パッとみて判断できるスキルを磨いていくしかないのだろう.