値引きに頼る営業を見直す
「もう少し安くなりませんか」と言われるとすぐに値引きの計算を始めてしまう.受注を逃したくない気持ちがあるからである.しかし「高い」と言われた理由は聞けているだろうか.予算が足りない場合もあれば他社と同じものに見えている場合もある.寿命が長いかもしれない.壊れた商品の取り替えは結構大変だ.必要な仕様が合わず購入を決められないのかもしれない.理由を聞かずに価格だけを下げても受注につながるとは限らない.
「高い」をそのまま値引きの理由にしない
価格を下げる前に何と比べて高いと感じたのかを聞く必要がある.競合する商品の型番・数量・仕様・使いやすさ・納期・付属品・サポート範囲を確認する.同じ一台でも設置作業まで含む見積と本体だけの見積では金額の意味が違う.比較条件を揃えないまま価格だけを比べても値引きの必要性は判断できない.
予算が不足しているなら必要な機能や対象範囲を絞れるかを検討する.導入時期を分ける方法も考えられる.違いが分からないなら仕様を並べるだけでなく実際の使用場面で何が変わるのかを説明する.必要な仕様を満たしていないなら説明で埋められる差なのか商品や提案先の見直しが必要なのかを見極める.「高い」という一言の中身を分けないまま値下げするのは原因を残したまま条件だけを崩すことになる.
値引きの可否を答える前に会話を続ける
「何と比べて高いと感じられましたか」「今回外せない条件はどれでしょうか」と聞けば相手が見ている比較軸が見えてくる.「価格以外に検討を止めている点はありますか」と尋ねれば納期や社内手続きの問題が出てくることもある.社内で説明するために必要な資料を確認し条件が合えば導入を進められる段階なのかも確かめる.
ここで大切なのは担当者の推測と相手が実際に話した内容を分けて残すことである.価格を下げれば決まるという見込みも確認が取れていなければ仮説にすぎない.聞いた言葉と次に確認することを記録しておけば別の担当者が続けて話すときにも値引きだけが先行しにくくなる.
購入価格の先にある違いを説明する
製造業の設備や部品では購入後にも段取り・交換・検査・保守の手間がかかる.自社製品の特徴がその作業に関係するなら「高性能です」と言うだけでは足りない.交換の頻度や現在の作業を聞きどの手順が変わるのかを示す必要がある.
例えば交換時間を短縮できる製品なら実際に何を外して何を取り付けるのか対応する設備の条件は何かを仕様書や比較試験で確かめられる範囲で伝える.確認していない削減額を効果として約束してはいけない.価格差を上回る価値があるかは顧客の使い方や数量によって変わるからである.
金額を下げるなら条件も一緒に変える
不要な機能を外す・対象範囲を絞る・導入を段階に分けるという提案なら何を含めて何を含めないかを見積書に明記できる.数量や納期による価格調整も根拠と適用条件を残しておく.同じ内容を理由なく安くすることが続けば次の交渉でも値引きを前提にされやすくなる.今回だけの条件と通常価格を混同させないことが必要である.
次は考え方を示すための仮の計算である.販売価格100万円・原価80万円なら粗利益は20万円になる.原価が変わらないまま10万円値引きすると粗利益は10万円になり半分になる.売上を取れたかだけを見ていると利益への影響を見落とす.追加作業・配送・保守の負担も含め条件を守って利益を残せたかを振り返る必要がある.
一件の値引きから商品と売り方を見直す
値引き理由・比較対象・変更した条件・受注または失注の結果を案件ごとに残す.同じ理由が続くなら営業の説明だけでなく商品仕様・対象顧客・価格設定の前提に問題がないかを調べる.値引きを禁止するだけではなぜ高いと言われたのかが分からないままである.まず直近の値引き案件を一件選び「下げる前に何を確認できていたか」を振り返るところから始めるとよい.
関連する考え方と支援
選ばれなかった商品と購入の決め手を確認する方法では失注後に相手へ聞く内容を説明している.自社の説明する価値が曖昧な場合は強みを顧客の用途と選定理由に変える方法も参考になる.
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